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婦人科ウィメンズセンター

卵巣がん


 卵巣は、卵巣表面を覆っている表層上皮、卵子のもとになる胚細胞、性ホルモンを産生する性索間質などがあります。卵巣腫瘍はこれらの全てから発生するため、発生する組織によって大きく3つのグループに分かれます。そして、それぞれ良性、境界悪性、悪性の3つのグループに分かれるため非常に多種多様な腫瘍となります(約70種類)。多くは良性ですが、時に境界悪性、悪性のケースがあります。
 卵巣がんは、排卵する際に卵巣表面にできる傷と関連すると考えれており、排卵回数が多いほどリスクが高まります。つまり、妊娠出産歴のない・少ない方、初経の早い方や閉経の遅い方はリスク群に入ると言われています。生活習慣の欧米化や骨盤内の慢性炎症である子宮内膜症性嚢胞(チョコレート嚢胞)もリスクとなり、卵巣がんは増加の一途をたどっています。
 また、日本では卵巣がんの11.8%に遺伝性乳がん卵巣がんの原因遺伝子であるBRCA1/2の変異がみられます。この遺伝子異常がある場合、乳がん、卵巣がん以外にも前立腺がん、膵臓がんのリスクも高いことが分かっています。
 遺伝性乳がん卵巣がんと診断された乳がん患者さんの場合、卵巣がんの予防法としてリスク低減卵管卵巣摘出術が保険適応で行えるようになり、当院でも腹腔鏡で低侵襲に行っております。

卵巣がん

卵巣がん

症状について

 自覚症状に乏しいことが特徴です。卵巣腫瘍が大きくなったり、腹水が貯まってくると、お腹が張る・出てきたといった症状が出てきます。偶然、他科でのエコーやCT検査で指摘されることもあります。自覚症状が乏しく、卵巣がんがみつかった時には60%以上の人は進行がんの状態で発見されることから、卵巣がんは「サイレントキラー」とも言われています。

検査について

①内診、腟鏡診
 腫瘍の大きさや動き方、腹部の膨満の程度をみたりします。
② エコー、CT、MRI検査
 腫瘍の大きさ、腫瘍の中身が何か、悪性を疑う部位を認めるかどうか、がんを疑う場合は卵巣外への進行(子宮や腹腔内腹膜)、腹水の存在、リンパ節転移や他臓器への遠隔転移はあるのかを評価します。
 下の画像には巨大な卵巣腫瘍が写っていますが、左側の症例では均一な楕円形であるのに対し、右側の症例では内部に不正な隆起した部分が散見されます。これら二つの症例は摘出手術を行い、左側は良性、右側は悪性の診断でした。
このように、手術で摘出するまでは良性か悪性かの判断はできませんが、ある程度は画像診断で予測をつけることは可能です。

卵巣腫瘍

卵巣腫瘍(左側は良性、右側は悪性)

③腫瘍マーカー検査
 がんの補助診断目的や治療後の経過や治療の効果を見るために行います。卵巣がんは多種多様のため、CA125、CA19-9、HE-4、CA72-4、CEA、AFP、SCCなど必要なマーカーを測定します。

治療→組織型、進行期

 原則として手術療法になり、病側付属器(卵巣・卵管)摘出術が標準術式になります。
 良性の場合は追加治療なし(閉経後の方は対側付属器摘出を行うこともあります)、境界悪性の場合は子宮全摘と対側付属器摘出、悪性の場合は子宮全摘と対側付属器摘出と後腹膜リンパ節(骨盤内、傍大動脈リンパ節)生検・郭清を行います。
しかし悪性の場合、初回の手術で腫瘍全摘をできない場合が多く、可能な限りの腫瘍減量術や診断目的の生検に留まることもあります。その場合、化学療法を行い、腫瘍が縮小したら二期的に手術をすることもあります。
 当院では、術前に根治術が難しいと考えられる場合、診断的腹腔鏡手術を行い、身体への負担を少なくし、すぐに化学療法に移ることができるようにしています。この際に摘出した標本でHRD検査という検査を行い、検査結果に準じて化学療法の内容を検討しております。

 手術で摘出した標本を検査し、組織型、進行期を確定します。組織型が予後不良のタイプやステージⅠC期以上の方は化学療法を行います。
 標準的な化学療法として、パクリタキセルとカルボプラチンの二剤併用療法を行います。主な副作用としては、脱毛、吐き気、食欲不振、骨髄抑制(貧血、白血球数減少による感染への抵抗力の低下など)、末梢神経傷害(手足のしびれなど)が挙げられます。現在は副作用への対策が発達し、症状をコントロールできるようになり、ほとんどの方が外来で通院しながら治療を行っております。
 また、ステージⅢ期以上の方では再発するリスクを抑えるために維持的な化学療法を行います。HRD検査が陽性の場合はベバシズマブ、オラパリブ、HRD検査が陰性・未検査の場合は、ベバシズマブ、ニラパリブ(標準治療が効果があった方)が選択できます。

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